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ずっと真夜中でいいのに。『沈香学』


現代の若者と「ガチャ」は切っても切り離せない。

全クリなんて概念が存在しないソーシャルゲームの強いキャラ・かわいいアイテムを手に入れるために、お金を注ぎ込むことを躊躇わない人はとても多い。その中身のほとんどがハズレだと分かっていてもなお、当たり(レアキャラ)が出るまでガチャを回し続ける。

僕だってもちろん課金して回したことはあるし、そのデータはスマホを壊した時に消えてしまった。

そんなに期待とお金を掛けられて、ハズレなら舌打ちをされ、キャラクターもストレスで自我を持ち始めてもおかしくないと思う。

モノによっては、「天井」という概念がある。
これはつまり、リアルなガチャチャでイメージするところの、中身を全部引いちゃえば絶対に1つは欲しい物が入っているよね?という理論。

リアルで想像したらガチャガチャを何十回も引いてるのを見たらすこし引いてしまうけど、今日も世界でたくさんの人が、家に居ながらガチャガチャの中身を空にするという行いをしてると考えると面白い。

ゲームのレビューを見に行ってみると、【このゲームは無課金に厳しすぎます。★☆☆☆☆】【全然レアキャラが出ないくせにジェムが全くたまりません。★☆☆☆☆】のように、一見パチンコ店のクチコミのようだが、どれだけ無課金に優しいかが評価の対象になっているみたいだ。

ところで最近、Spotifyが「Gacha Pop(ガチャ・ポップ)」というプレイリストを作ったらしい。

「カプセルトイのガチャガチャは日本発のおもちゃで、カラフルなカプセルの中にいろいろなものが入っていて、カプセルを開けるまで何が出てくるかわからないワクワク感があります。そして、おもちゃ箱のようなポップ感がある。“ガチャ”という短い言葉の中に、いろいろな意味が内包されているところが良いと思いました。また、海外でもガチャガチャは流行しているので、海外からしても日本っぽい語感がある言葉です。“ガチャ”のイメージがここ数年間思い描いていたイメージと合致し、〈Gacha Pop〉という言葉が生まれました」

〈Gacha Pop〉がJ-POPを再定義する? 日本の音楽を海外に発信するための新たな動き-Rolling Stone JAPAN

ついに音楽も「ガチャ」になったのか。

日本人からすると、流行りのJ-POPをまとめたような印象も受けるこのプレイリストも、海外の人からすると中身が謎だらけのシークレット・ガチャを引いているようで面白いのではないだろうか。

外国人から「J-POP」と呼ばれるよりも、「Gacha Pop」と呼ばれる方がなんだかスタイリッシュでいい。

まさに現代の簡単にシャッフル再生できる環境にあってるプレイリストだなと考えていたら、なんとSpotifyの無料プランは、プレイリストがシャッフル再生しかできないようになっているらしい。

【「Gacha Pop(ガチャ・ポップ)」は無課金にも優しいように配慮されていました。★★★★★】

ずっと真夜中でいいのに。「沈香学」

ずとまよの新作「沈香学」はあいも変わらず、ブリンブリンのスラップベースにチャカチャカのカッティングギターで、技巧派ポップミュージックを鳴らしていた。

今作はその演奏テクニックがより強く、わかりやすく感じる仕上がりになっている。ACAねの歌うメロディが他2作品よりも、とてもメロディアスにバンドサウンドとマッチしている印象があってとてもバランスがいいと感じた。

グルーヴィーなこの音楽が、6畳ぐらいの部屋で響いているような感覚がするからずとまよはいつも面白いなと思う。
あまりスタジオで集まってレコーディングをするロックバンドのようなイメージが浮かばないし、大きなアリーナでのライブ映像には個人的に違和感さえ感じるほど、、

そのくらいにパーソナルな部分に焦点を当てた歌詞と、バンドサウンドをうまく彩る電子音が、インターネット発の音楽シーンの魅力を感じさせてくれる。

City Pop調の7曲目「夏枯れ」が、これまでのずとまよとはまた違う感覚で楽しめる。

作品情報

作品名沈香学
作者ずっと真夜中でいいのに。
レーベルPTA
発売年2018年2月8日
収録1.たまらない夜
2.パウエル
3.世の中のことわからない
4.プラスチックラブ
5.ビールを用意しててね
6.ロケット裸族
7.トランシーバ・デート
8.夏の夜
9.東京タワー
10.ちっちゃなハート

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