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YOASOBIの1stEP『THE BOOK』は短編集のような作品だった【感想・レビュー】

2020年、気がついた時にはバズっていて年末の紅白歌合戦出演まで駆け抜けたインターネット発のユニット「YOASOBI」。

自分ももれなく「夜に駆ける」にどハマりした時期があり、ネット発の音楽シーンの力を改めて感じた瞬間だった。

これまでCDを一枚もリリースしていなかったYOASOBIのファーストEP「THE BOOK」がリリースされてと聞いて、早速聴いてみた。

YOASOBIの音楽

レビューに移る前に、自分が考える「YOASOBI」の音楽について。

みなさんはそもそも「YOASOBI」がどういったコンセプトで活動しているのかを知っていただろうか、自分は今回調べてみて初めて知った。

YOASOBIは「小説を音楽にする」ユニットであり、ソニーミュージックの運営する小説&イラスト投稿サイト「monogatary.com」に投稿された小説を原作として作曲しているらしい。

例えば代表曲「夜に駆ける」は、「タナトスの誘惑」という小説を元に作られている。短くすぐ読めるのでぜひ読んでみてほしい。

https://monogatary.com/episode/33827

題材となる小説も合わせてYOASOBIの音楽に尚更感じたのは「アンダーグラウンド感」だ。

形だけ見れば、曲調はポップだし物凄い人気で「メジャー感」があるかもしれないけれど、歌っている事に注目してみると、なにか鬱々としたものを感じる。

もちろんこれはYOASOBIだけじゃなくネットの音楽シーン全体に感じる事で、個人的には時代の「鬱々」とした感じとか若者の「苦悩」みたいな事を歌っているのは、パンクバンドよりもネットの音楽シーンだと思っている。

そんなアンダーグラウンドな音楽が、TV出演までしたのは本当にすごい事だと思うし、日本の音楽シーンにも大きな影響を与えた出来事だと思う。

『THE BOOK』レビュー

前置きが長くなってしまったけれどここからはレビューをしていこうと思う。

まずこのEPは「エピローグ(Epilogue)」で始まり「プロローグ(Prologue)」で幕を閉じる構成になっており、一目見て「逆だ・・・」と思った。

そして2曲目に「アンコール」が来ることからしても、「逆に聴けばいいのではないか」とも一瞬思う。

実際は普通に聴いても、逆から聴いても特に違和感が無くいい流れだったと思うので、まだこの部分に明確な意味づけはできていない。何度も聞くうちに出来るだろうか・・・

ただ個人的には「エピローグ」の方が終わりっぽい音がする。

どの曲も共通して「世界観を作り出すのが上手い」と感じた。曲の雰囲気にスッと入っていける感覚がして、何度聴いても疲れなかった。

特に曲に惹き込まれたのは、6曲目「群青」の音楽がやんで合唱が始まるところだ。音楽がやんだのにも関わらず、ちゃんと壮大なイメージが伝わってくる。

また、ikuraさんのプレーンでクセの少ない歌声が最高に聴きやすい。この歌声が、YOASOBIの曲がひたすら暗いだけではない事の要因だと思う。

「あの夢をなぞって」など、ポップでキャッチーながら何処か怪しさ持ち合わせる様な「YOASOBI節」の聴いた音楽が勢揃いするアルバムで、あまり深く聴いたことの無かった自分には新鮮で面白かった。

そして、それぞれの曲が独立しても強く、メッセージ性を持ったこのEPは「THE BOOK」という名の通り、まさに「短編集」の様なまとまり方をしていてとても良かった。

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