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millennium parade『THE MILLENNIUM PARADE』常田大希の映し出す新たなアートの形【感想・レビュー】

常田大希率いるプロジェクト『millennium parade』の1stスタジオアルバム「THE MILLENNIUM PARADE」は、時代に新たなアートの形を示し出した名盤である。

【収録曲】
1.Hyakki Yagyō
2.Fly with me
3.Bon Dance
4.Trepanation
5.Deadbody
6.Plankton
7.lost and found
8.matsuri no ato
9.2992
10.TOKYO CHAOTIC!!!
11.Philip
12.Fireworks and Flying Sparks
13.The Coffin
14.FAMILIA

大衆に示された新たなアート

アルバムを通して圧倒的な「大きさ」を感じる。それは単にアンサンブルの大きさ、曲の壮大さというよりも、エネルギーの大きさという表現がよく合う。

例えば「Fly with me」には若者の持つエネルギー、時代に反抗する大きなエネルギーがある。

多彩なメンバーで作り上げられた楽曲は、まさにジャンルレスという言葉がぴったり。まるでルーツが見えてこないところに先鋭的な音楽を感じるのだ。

文字通り尖った音楽なのにも関わらず、こんなにも聞きやすいのは常田さんのポップアーティストとしての力が大きいことを証明している。

そして、自分が新たなアートを世の中に提示しているなと感じたのは、今作が「アルバム単位での表現」だった事に大きな要因がある。

2曲目「Fly with me」から3曲目「Bon Dance」への繋がり方であったり、途中に入る短いイントロ曲「Deadbody」「TOKYO CHAOTIC!!!」を聴けば、アルバム単位での作品だということは明確だ。

ストリーミングの時代に逆流する様な今作は、「リスナーに新たな価値観を問う」作品になるだろう。

作品の持つ「祭り」というコンセプト

このアルバムのコンセプトは「祭り」であり、このアルバムを聴くこと自体が一つの儀式の様である。

「Hyakki yagyo」とか「Bon Dance」など、タイトルから和のテイストを持ったものもあるし、実際に「Bon Dance」では花火やお囃子の音を音楽に馴染ませている。

このアルバムで綴られていることの中には、どこか「死」を感じさせるものが多い様に感じる。そんな「死」について考えさせられる曲を聴いている時、自分は同時に「生」についても考えさせられている事に気がつく。

祭りには、「死者を弔う」「祈りを捧げる」といった目的があるが、このアルバムの中で言うと7曲目「lost and found」までがどちらかといえば「死者を弔う」というテーマで描かれているのでは無いかと思う。

そして9曲目「2992」は1000年後の未来をテーマにした曲であり「matsuri no ato」を挟んだ7曲目「lost and found」との間には、時間的な溝を感じる。

その時間的な溝を挟んで作品の後半には「祈りを捧げる」というテーマが込められているのでは無いだろうか。アルバムの最後を飾る「FAMILIA」は、オルガンの響きが教会を連想させ、また繊細な歌声がまるで祈りを捧げているかの様だ。

<嗚呼
  息継ぎの仕方さえ忘れた
  そんな今もただただ泣いていた
        生きたいと泣いていた/『FAMILIA』>

死者を弔い、未来へ祈りを捧げているのがこのアルバムだ。

まとめ

今作にはとにかく衝撃を受けた。

日本の音楽シーンに大きな影響を与えてくれるほどの名作だし、millennium paradeとしてみても、常田大希という一人の音楽家として見ても大きな作品になったのでは無いかと思う。

ぜひアルバムを通して聴いてほしい。

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