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森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』が傑作過ぎた【感想・レビュー】

森見登美彦さんの代表作である「四畳半シリーズ」。

自分も「四畳半神話体系」から森見さんのファンになり、今回「四畳半タイムマシンブルース」が出ると聞いてとてつもなく楽しみにしていた。

結論から言うとものすごい傑作だった。

作品情報

水没したクーラーのリモコンを求めて昨日へGO! タイムトラベラーの自覚に欠ける悪友が勝手に過去を改変して世界は消滅の危機を迎える。そして、ひそかに想いを寄せる彼女がひた隠しにする秘密……。
森見登美彦の初期代表作のひとつでアニメ版にもファンが多い『四畳半神話大系』。ヨーロッパ企画の代表であり、アニメ版『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』の脚本を担当した上田誠の舞台作品『サマータイムマシン・ブルース』。互いに信頼をよせる盟友たちの代表作がひとつになった、熱いコラボレーションが実現!
                                   公式サイトより

https://kadobun.jp/special/yojohan-timemachine/

両方のファンにとって至高

まずこの本は、「四畳半神話体系」のファンにとっても、「サマータイムマシンブルース」のファンにとっても、まさにファンサービスといえる素晴らしいものになっている。

両方が好きな自分のような人は特にそう感じるだろうと思う。

片方が好きで片方はあまり知らないという人が読んでも、きっともう片方の作品のファンになってしまうのではないだろうか。

「四畳半」節がたまらない

基本的にストーリーは、「サマータイムマシンブルース」のそのまんま進んでいくことになる。ストーリだけでなく、犬の名前が「ケチャ」だったり銭湯の名前が「オアシス」だったり、細かいところにまで「サマータイムマシンブルース」の片鱗が見える。

ただ、「サマータイムマシンブルース」と明確に別物だと感じてしまうのは、独特の言い回しだったり、独特のキャラクター達だったりに「四畳半」節を感じるからなんだと思う。

まさにこの「四畳半」節を楽しみにしていた自分からすると、待ってましたという感じだった。

二作品の相性が良すぎる

まずどちらも大学生達の話という点でまず相性がいい。

そして、「四畳半神話体系」と「タイムマシン」との相性がとてもいい。

相性がいいのは、「四畳半神話体系」がいくつものパラレルワールドを短編集として描いたような作品であり、SF的な要素をそもそも持っているからなんだと思う。

そして何より世界観がマッチしている。

ここからは少しだけれたばれになってしまうけど、例えば(今日の)主人公たちが、(昨日の)キャラクターにすでに遭遇しているという場面が序盤から出てくる。

普通の作品ならば、「なんでここにこいつがいるんだ?」とか「ここで何してんだ?」とか違和感を感じてしまう事があったとしても、この作品でそれを感じることが全くなかった。

というのも、そもそも「四畳半神話体系」自体、いつどこに誰がいて、何をしていてもおかしくない作品で、その不思議な世界観を楽しむ作品だからだ。

前半を何の違和感もなく楽しめ、後半は怒涛の展開や伏線回収を楽しめる。

両作者という点でも非常に相性がいい。

なんせアニメ版『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』の脚本を担当したのは上田誠さんだからだ。

まとめ

とにかくファンにはぜひ読んでもらいたい作品だし、全くの初見という人もこの作品をきっかけに両作品に興味を持っていけばいいのではないかと思う。

そして何より楽しみにしているのが「映像化」だ、森見作品の映像化に外れはないし、アニメ作品の脚本が上田さんという点からしてもいいものができるのは間違いない。

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