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Netflix映画『オクジャ/okja』少女と豚とビジネスと。【感想・ネタバレ】

この前パラサイトをみてポンジュノ監督の作品をもっと見たいと思った自分は、Netflixオリジナル映画の『オクジャ/okja』を見てみることにした。

すごくシンプルな映画ではあったんだけど、ところどころに考えさせられる部分がたくさんあって面白かった。

※この記事はネタバレが含まれています。

【視聴後の一言メモ】

少女と動物の友情物語が描かれる反面、食の闇や人間の汚いところが描かれとても考えさせられた。
衝撃的なラストシーンが自分の中での評価をグンと引き上げることになった。

お気に入り度:★★★★☆

作品情報

『オクジャ/okjya』2017年製作/121分/韓国・アメリカ合作

監督 ポン・ジュノ
脚本 ポン・ジュノ/ジョン・ロンスン
製作 デデ・ガードナー/ジェレミー・クライナー/ルイス・テワン・キム
  チェ・ドゥホ/ソ・ウシク/ポン・ジュノ/テッド・サランドス
出演者 アン・ソヒョン/ティルダ・スウィントン/ポール・ダノ
   ジェイク・ジレンホール/スティーヴン・ユァン

解説

ポン・ジュノ監督によるNetflixオリジナル映画作品。

第70回カンヌ国際映画祭では、ネット配信作品としてははじめてメインコンペティション部門に出品され話題となった作品。

韓国人女性が主人公で、英語を話すたくさんの脇役が登場するこの作品は、韓国とニューヨークの2つが舞台となる。

【あらすじ】
韓国の山間の家で暮らす少女ミジャは、大きな動物オクジャの面倒を見ながら平穏な毎日を送っている。優しい心を持つオクジャは、ミジャにとって親友ともいえる大切な存在だった。
ところがある日、多国籍企業ミランド社がオクジャをニューヨークに連れ去ってしまう。自己顕示欲の強いミランド社CEOルーシー・ミランドが、ある壮大な計画のためにオクジャを利用しようとしているのだ。オクジャを救うため、具体的な方策もないままニューヨークへと旅立つミジャだったが……。
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感想・ネタバレあり

食べられてしまいそうになる友達を助けるために、少女がいろんな困難に直面していくという一見シンプルなストーリー展開なだけに、人それぞれの感性によって評価が変わってくるような作品なのかなと思う。

ラストの方に、すごく心を揺さぶられたシーンがあって、そこで自分の中のこの映画に対する評価がものすごく上がったので後で書きたいと思う。

描かれる少女とオクジャの友情

物語の前半、舞台は韓国の山の中。

綺麗な森の風景に、アコギで奏でられる民族的な音楽が重なって幻想的な雰囲気を出している。ポン・ジュノ監督によると、前半の自然の描写は宮崎駿作品に影響があるらしく、確かにジブリに通ずる自然の美しさを感じる。

物語が始まって間もなく、主人公のミジャが食材を集めているシーンからすでに「オクジャ」と名付けられた動物が登場する。

大きなカバのような見た目をしたその動物の正体は物語の冒頭で説明されるが、多国籍企業ミランド社が独自の品種改良によって生み出した新種の豚で、「スーパーピッグ」と名付けられている。食べるところがたくさんある上においしいらしい。

前半部分ではとにかく、ミジャとオクジャの深い関係が伝わってきてとてもほっこりする。

小さい頃から深く接してきたおかげなのか分からないが、オクジャにはかなりの知性が備わっている感じがあり、また感情も豊かな生き物だという事も分かる。

オクジャはミジャがまだ小さいときにミランド社からやってきて、一緒に暮らす祖父のビボンからはお金を出して買い取ったものだと伝えられていたんだけど、実はミランド社の主催する育成コンテストに参加していてオクジャはそのコンテストの優勝者としてニューヨークのミランド本社に送られてしまう事になる。

ヒボンはそのことをオクジャが輸送される直前まで明かさず、ヒボンはミジャにオクジャのために用意したお金で買った純金製の子豚を渡し、オクジャのことをあきらめるように諭す。

しかしミジャはオクジャのことを追って一人で飛び出していってしまう。

巻き込まれる主人公

オクジャ奪還を目指すミジャの前に、動物愛護団体のALFが登場しなんとかオクジャを保護することに成功する。

そもそもミランド社はクリーンなイメージを通している会社で、ALFの目的はミランド社が遺伝子操作や強制交尾を行わせている「スーパーピッグ計画」の闇を暴くこと。

【動物愛護団体ALF】

ALFのリーダージェイは同組織の翻訳者のケイを通じてオクジャを連れ出した目的を伝える。ミランダ社の遺伝子操作のための研究所の秘密をオクジャに盗撮装置をとりつけて暴きたいという。そのためにはオクジャをいったんアメリカに送る必要があるが問題がないか、とジェイはミジャに聞く。ミジャは拒否するが、ケイが意図的に誤って同意していると伝える。のちにこの件でALFを追放される。盗撮装置を取り付けられたオクジャはミランダ社に返されて予定通りニューヨークに移送された。

【ミランド社】

ミランド社CEOはALFのテロに巻き込まれたことで会社の評判が落ちることを恐れている。人気回復のためにミジャを広告塔としてニューヨークに招くことにする。

実質ミジャは二つの組織に利用されるような形になってしまい、オクジャとまた離れ離れになってしまう。

韓国語しか話せない純粋な少女を利用する人間の醜さみたいなものも感じられるのがこの場面だった。

予想外なラスト

オクジャのおかげで「スーパーピッグ計画」の闇を暴露することが出来たALFだったが、オクジャを保護することに失敗してしまい、最終的にはミジャとともにと殺場へ行くことになる。そこには遺伝子開発によって生み出された大量のスーパーピッグがいて、スーパーピッグ計画を終わらせるため、すべてのスーパーピッグを処分しようとしている。

大量のスーパーピッグの中にいるオクジャを見つけたミジャだったが、殺されてしまう寸前だった。

作業員にオクジャとの写真を見せると、いったんは手が止まったものの、ちょうどそこに現れたミランド社のCEOであるナンシーが登場する。

「オクジャと一緒に故郷に帰りたい」と情に訴えかけたところで、これはあくまでビジネスであり売り物であるから渡すことはできないという。

そこでここが衝撃の展開!

ミジャはナンシーに向け、祖父からもらった純金製の子豚を見せて言い放つ。英語で。

「I want to buy okjya,Alive!(オクジャを買い取る!生きたまま)」

今まで家族同然に過ごしてきたオクジャを買い取るといったミジャの心境がどうだったのかは明らかではないし、直接的ではないにしろオクジャのことを「売り物」として扱ったことになるのは何ともモヤモヤする。

結果的に交渉は成立してオクジャと故郷に帰れることにはなるのだが、帰り道で処分されてしまうスーパーピッグ達と逆方向に歩くシーンは中々に心に来るものがあった。

まとめ

オクジャは正直、事前のあらすじを見ていた時は期待していなかったけれど、期待以上の素晴らしい作品だった。

さすがポンジュノ監督という感じの、すっきりしないような終わり方で見た後の余韻がかなりある。

最後に自分がこの作品を見ていて何よりも怖かった点を書いて終わろうと思う。

それは、「スーパーピッグが美味しそうで食べたくなってしまったところ」

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